一般には「デマに踊らされた民衆の過剰反応」と一括りにされがちなこの事件だが、実際には明確な経済的要因が存在していた。当時、日本経済は急激なインフレーションに見舞われており、物価上昇に対する人々の不信感は極限に達していた。日本経済新聞をはじめとする主要メディアは連日のように物資不足の懸念を報じており、消費者の購買行動を刺激する下地はすでに出来上がっていたのである。
さらに、供給側の問題も大きかった。製紙業界は原油価格の高騰を受けて製紙工場の操業短縮や値上げを検討しており、これが「紙の生産がストップする」という噂に真実味を与えてしまった。実際には国内の紙在庫自体は底をついていなかったものの、小売・流通業界における物流インフラが突発的な需要急増に対応できず、店頭の棚が空になる状態が長期化した。これにより、「棚に物がない」という視覚的恐怖が更なる買い占めを呼ぶ負のループが完成したのだった。