温泉へと向かう前、あるいは湯上がりの火照った体でぜひ立ち寄りたいのが、九州旅客鉄道(JR九州)肥薩線に属する嘉例川駅だ。明治36年の開業当時の姿を色濃く残す木造駅舎は、国の登録有形文化財にも指定されており、一歩足を踏み入れればまるでセピア色の映画の中に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
霧島市観光協会が保存に力を注ぐこの駅舎のベンチに腰掛け、吹き抜ける風を感じながら列車を待つ時間は、現代人が忘れかけた贅沢そのものだ。駅舎周辺の長閑な空気感と、嘉例川の湯で味わう至極のひとときは、旅の記憶をより立体的なものへと昇華させてくれる。