日本語学・ビジネスマナーの分野で高名な言語学者・金田一秀穂氏は、現代人が陥りやすい最大の落とし穴として「丁寧にしすぎるがゆえの誤用」を挙げる。その筆頭が「二重敬語」だ。
「ご覧になる」という尊敬語に、さらに尊敬の助動詞「られる」を付け足した「ご覧になられる」は、文法的に過剰な二重敬語となる。悪気はないものの、冗長で耳障りな印象を与えてしまうため、「ご覧になりましたか」「ご覧ください」で止めるのが正しい。
また、「拝見される」という表現も深刻な誤用の一例だ。謙譲語の「拝見」に尊敬の「される」を付与した支離滅裂な形であり、自分の動作なのか相手の動作なのかが曖昧になる。こうした誤用を防ぐには、言葉の語源と意味のベクトルを正しく把握することが不可欠である。