偉大な父・松方弘樹の豪放磊落な圧倒的存在感と、母・仁科亜季子が持つ洗練された凛とした美意識。日本演劇界の第一線を走り続けた二人の間に生まれた宿命は、幼少期から絶えず付きまとった。「親の七光り」という容赦ない世間の偏見と好奇の目。どれほど泥臭く芝居に向き合おうとも、世間はまずその血統に注目した。
偉大すぎる両親の陰で味わった葛藤は、決して浅いものではない。しかし、時を経て彼が辿り着いたのは、その血脈から逃げるのではなく、己の身体に流れる表現者のDNAを受け入れ、自らの力で解き放つという境地だった。親の背中を見つめ続けた少年時代を経て、一人の独立した男としての足場を固めた瞬間でもあった。