「ドームツアーの最前列が当たった」「倍率数十倍の舞台チケットを自引きできた」――SNSやファンのコミュニティで絶えず囁かれる報告が、三輪神社推し活当選祈願の求心力を強固なものにしています。全国に数多ある社寺のなかで、なぜ大須のこの地が特別な聖地となったのか。その背景には、主祭神である大物主神(大国主命と同一神格)にまつわる神話と、神道の「縁」に対する参拝者の鮮烈な解釈があります。
『古事記』に記された「因幡の白兎」伝説において、大国主命は傷ついた白兎を救い、その兎の予言によって八上比売との良縁を成就させました。この神話から、三輪神社ではうさぎが「神の使者」として崇められ、境内の至る所に配されています。本来、神社における三輪神社縁結びのご利益は男女の婚姻や人間関係の調和を指すものでした。しかし、ライブやイベントのプラチナチケットを「推しと自分を出会わせてくれる運命の赤い糸」と捉えるファン文化が定着するにつれ、縁を結び福を運ぶ白兎の信仰が、熱烈な当選祈願の拠り所へと発展したのです。
現地を訪れると、遠方からキャリーケースを引いて直行してきた女性グループや、推しのメンバーカラーを身にまとった参拝者が列をなしています。社伝によると、尾張藩の弓術練習場であった「矢場跡」の石碑が境内に残されており、これが近隣の「矢場町」という地名の発祥と伝えられています。「的を射抜く」という矢場の歴史的文脈が、「狙ったチケットを射止める」「夢の当選を引き寄せる」という現代の願掛けと奇跡的な親和性を見せたことも、推し活ファンの心を強く捉えた大きな要因です。