錦市場の魅力は食だけに留まらない。実はここ、江戸時代の天才絵師として知られる伊藤若沖(いとうじゃくちゅう)の生誕地でもある。若沖は錦市場の青物問屋「枡屋」の長男として生まれ、絵を描き続ける一方で、市場が営業停止の危機に陥った際には町年寄として奔走し、市場の存続に決定的な役割を果たした歴史を持つ。
現在、シャッターが下りる夜間や早朝の市場を歩くと、各店舗のシャッターに色鮮やかに描かれた伊藤若沖の代表作の数々を鑑賞することができる。昼間の賑やかな食空間から一転、夜のアーケードはまるで路上美術館のような静寂と荘厳さに包まれる。歴史と芸術が交差するこの背景を知ることで、錦市場散策の深みは一気に増す。