看護実習カンファレンスや新人指導の現場で頻繁に見受けられるのが、「患者さんがまだ病気を受け入れてくれないので、早く事実を説明して指導を進めたい」という焦燥感です。これは支援者側が最も陥りやすい重大な錯誤です。
精神分析や心理療法の領域において、防衛機制は「悪」ではなく、自我が耐えきれない苦痛から精神を守るための極めて健全な生命維持反応とみなされます。フィンクの危機モデルにおける「防御的退行」は、次の「承認」という深い痛みを伴うステップへ進むための十分なエネルギーを蓄える充電期間です。
実習生が指導目標を急ぐあまり、「退院のために自分でパウチ交換を覚えなければ困りますよ」と患者の防衛を剥ぎ取ろうとすると、患者は医療従事者に強い敵意を抱くか、あるいは一気に深い抑うつ・パニックへと転落してしまいます。現場のリアルな教訓として、「患者が現実逃避している姿そのものを、必要な防衛反応として見守る勇気」こそが看護の本質です。