なぜ黒カビはこれほどまでにしぶといのか。その理由はカビの生体構造にある。浴室に発生するクラドスポリウムなどの黒カビは、湿気と皮脂汚れを養分に繁殖し、合成樹脂であるゴムパッキンや多孔質なタイルの目地の内部へと奥深く根(菌糸)を侵入させる。表面をデッキブラシでいくら力任せに洗っても、削り取れるのは表面に露出した胞子部分に過ぎない。
素材の奥底に残された菌糸は生き残り続け、水分を得るたびに再び黒い色素(メラニン色素)を生成する。つまり、機械的な摩擦だけで解決しようとする物理攻撃は、素材を傷つけてさらにカビが根を張りやすい微細な傷を作る逆効果すら生み出してしまうのだ。攻略の鍵は「削る」ことではなく、薬剤を奥深くまで侵入させる「浸透と分解」にある。