川沿いの道を一歩奥へ入ると、大正から昭和初期にかけて花開いた「阪神間モダニズム」の息吹を今に伝える洋風建築や重厚な石垣が姿を現す。谷崎潤一郎の小説『細雪』の舞台としても名高いこのエリアは、日本の近代文学や芸術文化を育んできた揺るぎない土壌を持つ。
だが、この街は決して過去の栄光だけにすがっているわけではない。2026年の今、歴史ある景観に溶け込むようにして、感度の高いクラフトベーカリーや自家焙煎のスペシャルティコーヒー店、予約制のギャラリーが点在している。派手な看板を掲げず、控えめな真鍮のプレートだけを掲げた隠れ家のような店々。看板商品のクロワッサンを買い求める地元客と、わざわざ遠方から訪れる愛好家が、静かな路地裏で静かにすれ違う。