日経「星新一賞」は、第1回(2013年)の公募開始当初から「人間以外の応募(人工知能等)を受け付ける」という世界でも類を見ない斬新な規定を設けていました。星新一の先進的な精神を受け継ぐ本賞は、機械が物語を紡ぐ可能性を早くから公式に開いていたのです。
AI小説に対する文学界の反応は、賞賛と懐疑が入り交じるものでした。初期の段階では「文脈の破綻がないことに驚嘆する」という好意的な評価があった一方、「論理的な整合性は保たれていても、魂を揺さぶる情念や偶然のひらめきに欠ける」という厳しい指摘も相次ぎました。
その後、応募要項は生成AIの劇的な普及に伴って見直しが行われ、「AIツールの使用有無および使用プロセスの明記」が義務付けられるなど、より透明性の高いルールへと進化しています。審査員が求めているのは、AIに丸投げした文章ではなく、「AIという強力な相棒を得て、人間がどれだけ新しい表現領域を切り拓けたか」という点に集約されています。