多くのビジネスパーソンが疑問を抱いたのが、自ら創業して時価総額数百億円規模に育て上げた株式会社メタップスの退任理由です。2007年に前身となるイーファクター株式会社を設立し、アプリ収益化プラットフォーム事業で世界展開、2015年に29歳で株式上場を果たした佐藤氏が、なぜ経営の一線から退いたのでしょうか。
当時の決算説明資料や関係者の証言、本人の手記から浮かび上がるのは、「上場市場の短期的な要請と、自らが追究したい長期イノベーションとの構造的ジレンマ」です。
上場企業は四半期ごとの売上・利益成長を市場から強く求められます。しかし、佐藤氏が見据えていたAI、ブロックチェーン、メタバース、宇宙開発といった未開拓領域は、数千万円〜数十億円の先行投資を伴い、結実まで5〜10年単位の時間を要します。目先の利益を求める株主の声に応えながらフロンティアを開拓することの限界を痛感した同氏は、後進に経営を託し、自らは未踏の技術開発へフルコミットする道を選択しました。結果としてメタップスは後にMBO(経営陣による買収)を経て非公開化の道を歩むこととなり、佐藤氏の先見の明と決断の合理性が裏付けられています。