滋賀県大津市に差しかかる山間部、急カーブと勾配が連続する区間に存在するこのトンネルは、怪異の目撃談が後を絶たない。ライトの光に突如浮かび上がる謎の影、急激に重くなるステアリング、追い抜く車のない背後からの排気音。怪談ファンを惹きつけるエピソードの数々は、動画投稿サイトやSNSを起点に凄まじいスピードで拡散していった。
ネット空間で都市伝説が肥大化した背景には、ホラー・オカルトを主題に据えたネットコンテンツの隆盛がある。実証性の乏しい個人的な体験談であっても、デジタル上で反復・共有されるうちに、あたかも普遍的な怪異現象であるかのようなリアリティを獲得してしまうのだ。
だが、事故データの詳細や土木工学的な観点から現地を分析すると、恐怖の背後に隠された「物理的メカニズム」が見えてくる。滋賀県警察の統計や交通工学の知覚実験によれば、連続する急カーブによる視覚的錯覚や、トンネル出入り口付近における明暗順応の遅れがドライバーの瞬間的な幻視や不要な急ブレーキを誘発しやすい。脳の錯覚が心霊体験として解釈されている側面は極めて高い。