佐田啓二が急逝した当時、長男である中井貴一は2歳11ヶ月、間もなく3歳の誕生日を迎えようとしていた幼子でした。姉の中井貴恵も当時6歳であり、幼い姉弟にとって父親の温もりや生前の記憶はほとんど残されていませんでした。
大黒柱を失った中井家を守り抜いたのが、母・益子さんでした。益子さんは悲痛な試練に直面しながらも、決して子どもたちに父親の悪口や愚痴をこぼすことなく、家庭内に「偉大で優しい父のイメージ」を大切に残し続けました。中井貴一は後年のインタビューで、「家の中には常に父の写真があり、父の存在を感じながら育った」と述懐しています。
姉の中井貴恵は後に女優としてデビューし、エッセイストや絵本の読み聞かせ活動など多方面で才能を発揮。弟の中井貴一にとっても、幼少期から苦楽を共にしてきた姉の存在は精神的な支えであり、強い家族の絆が名優の土台を築き上げました。