樟脳(しょうのう)とは、常緑高木である楠(クスノキ)の木片を水蒸気蒸留して得られる天然の芳香結晶だ。西洋では「カンフル」と呼ばれ、古くから医薬品や香料の原料として広く利用されてきた歴史を持つ。楠(クスノキ)に含まれる成分は強力な虫よけ効果を発揮するだけでなく、独自の爽やかな香りを放つため、天然由来の防虫剤として長年重宝されてきた。
化学合成された防虫剤が普及する前の時代、衣替えの季節になると日本の家々からは樟脳独特の清涼な香りが漂っていた。合成ピレスロイド系やパラジクロロベンゼン製剤が増えた現在でも、デリケートなシルクや高級ウール、受け継がれた着物を守る手段として、天然樟脳の根強いファンは多い。