平日の夕方7時。都内の道場には、スーツを脱ぎ捨てた会社員や大学生が続々と集まってくる。彼らの目当ては、静寂の中での激しい汗だ。通知音に追われる日常から完全に遮断され、目の前の相手と対峙する数十分間。余計な雑念を入れる隙など微塵もない。
「スマホを置いても頭から離れなかった仕事のストレスが、組手が始まった瞬間に吹き飛ぶ」。そう語る20代のITエンジニアの表情は晴れやかだ。バーチャルな体験が溢れる現代だからこそ、肌で感じる衝撃や息遣いという「生の対話」が強烈な価値を持つ。太道の稽古は、現代人にとって最高のデジタルデトックスなのだ。