1993年、有山達也は独立し「アリヤマデザインストア」を設立。ここから、日本の出版界に新たな風を吹き込む一連のプロジェクトが始動する。
90年代後半から2000年代初頭にかけて、彼が手がけた誌面デザインは既存の商業デザインとは明らかに一線を画していた。
雑誌『ku:nel』がもたらした生活美学と視覚構造
2003年、マガジンハウスから創刊されたライフスタイル誌『ku:nel(クウネル)』。この雑誌のアートディレクションを担当したことで、有山達也の名はデザイン界のみならず一般の読者層にも広く知れ渡ることになる。
当時の情報誌は、彩度の高すぎる写真と主張の強いキャッチコピーで読者の視線を引くスタイルが大半を占めていた。しかし、有山が提示した『ku:nel』の誌面構造は正反対だった。
- 自然光を活かした写真配置: 被写体が持つ本来の質感や空気感を損なわない配置。
- 風が通るような余白: ページの隅々まで要素を詰め込まず、読者の思考が休まる「間」を確保。
- 温もりを感じさせる書体選定: 明朝体やゴシック体の線幅や大きさを吟味し、人の声のトーンに近い文字組みを実践。
『ku:nel』は瞬く間に大ヒットを記録。単なる雑誌の枠を超えて、日本人の「日常の美意識」を再定義する文化的アイコンとなった。