フィギュアスケートを観戦していて多くの人が抱く最大の疑問が、「1回転ジャンプのはずのシングルアクセルが、なぜ実際には一回転半回っているのか」という点です。その答えは、フィギュアスケートにおける踏み切りと着氷の方向ルールにあります。
フィギュアスケートの基礎知識として、すべてのジャンプは必ず「後ろ向き(バックワード)」で着氷しなければなりません。氷上を滑走しながら後ろ向きに着氷することで、膝のクッションを使って衝撃を逃がし、流れるようなランディングへと繋げられるからです。
主要6種類のジャンプ(トウループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセル)のうち、前述の5種類はすべて「後ろ向き」で踏み切ります。後ろ向きに跳び、後ろ向きに着氷するため、シングルなら360度(1回転)、ダブルなら720度(2回転)と、回転数はそのまま整数になります。
しかし、アクセルジャンプだけは唯一、「前向き(フォワード)」に踏み切るジャンプです。前を向いて踏み切り、後ろを向いて着氷するため、最低でも半回転(180度)の余分な旋回が必要になります。つまり、計算式は以下のようになります。
【アクセルジャンプの回転数構造】
・シングルアクセル:1回転 + 半回転 = 1.5回転(540度)
・ダブルアクセル:2回転 + 半回転 = 2.5回転(900度)
・トリプルアクセル:3回転 + 半回転 = 3.5回転(1260度)
・クワッドアクセル:4回転 + 半回転 = 4.5回転(1620度)
前向きに助走しながら跳び上がる恐怖心に加え、他のジャンプよりも常に半回転(180度)多く空中を回らなければならない点こそが、アクセルが「最も難易度が高いジャンプ」と称される物理的な根拠です。