モンスターや悪霊といった肉体的な脅威を超えて、人間の精神の内側に潜む闇を描き出すサイコホラーの進化も見逃せない。現代の観客が抱く社会的孤立やアイデンティティの不確定性、人間関係の崩壊といった現実的な不安が、スクリーンの上で悪夢のようなビジョンとなって具現化される。
何が現実で何が妄想なのか、登場人物の錯乱した主観を追体験させられる感覚は、物理的なグロテスク描写以上の恐怖を観客に与える。信頼できない語り手、画面の端に潜む不吉な違和感、音響設計による聴覚的ストレス――これらが精巧に組み合わさることで、観客は逃げ場のない心理的迷宮へと誘われるのだ。