循環器内科学の第一人者であり、自治医科大学の内科学講座教授を務める苅尾七臣医師は、血圧の「変動性」がもたらす血管へのリスクを長年にわたり警鐘し続けている。
苅尾教授らの研究によれば、血圧は単に高いか低いかという平均値だけでなく、1日の中でどのように上下動するかという「デジタル・バイオマーカー」的側面が極めて重要であるとされる。昼間は高血圧でありながら、食後や夜間、あるいは起立時に血圧が80代まで暴落するような「血圧スパイク・低血圧スパイク」の急激な高低差こそが、血管内皮を傷つけ、脳血管障害や心不全の引き金となる。
「血圧が低いから安心」という従来の大雑把な見方は、現代の循環器病学において完全に否定されつつある。急激な血圧低下の陰に潜む心血管疾患のサインを見逃さない眼力こそが、臨床現場で求められている。