日本の近代・現代演劇を理解する上で、頻繁に比較されるのが「新劇」と「小劇場(アングラ・第3世代)」の違いです。両者は演劇に対するアプローチや劇団の組織構造において、明確な対比をなしています。
新劇は20世紀初頭、歌舞伎などの旧劇に対抗して生まれた「近代リアリズム演劇」です。西洋の戯曲(チェーホフ、シェイクスピア、イプセンなど)を翻訳・上演することを出発点とし、戯曲至上主義、明確な演出システム、固定の稽古場と専用劇場、そして後進を育てる付属研究所を持つという強固なピラミッド構造を特徴としています。
対して小劇場運動は、1960年代後半に寺山修司や唐十郎、鈴木忠志らが「既成の新劇のリアリズム」に反旗を翻して起こしたアングラムーブメントに始まります。さらに1980年代には野田秀樹や鴻上尚史、劇団☆新感線(いのうえひでのり)らが、スピード感あふれる言葉遊びやエンターテインメント性を前面に押し出しました。小劇場は劇作家や演出家の個人的な世界観を爆発させるスタイルであり、新劇が守り続ける「古典・普遍的技法の継承」とは好対照の進化を遂げています。