『夏への扉』がSF史における最高傑作の一つとして挙げられ続ける理由は、ハードSF的なタイムパラドックスの整合性と、誰もが共感できる王道の痛快ドラマが見事に調和している点にあります。
一般的にタイムトラベルを扱った作品は、因果律の矛盾や悲劇的な結末を迎えがちです。しかしハインラインは、論理的なパズルを完璧に解き明かした上で、「正義が報われ、悪が自滅し、愛する者と結ばれる」という最高級のカタルシスを描き切りました。SFというジャンルに不慣れな初心者からコアな小説愛好家まで、読後感の爽快さにおいて本作の右に出る作品は極めて稀です。