アルコールが体内に入ると、まず肝臓でアセトアルデヒドという強い毒性を持つ物質に分解される。この毒素を酢酸へと無害化する主役こそが、ALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)である。日本人の多くが抱える「お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる」フラッシング反応は、この酵素の働きが弱い、あるいは欠損しているために生じる生理現象だ。
この分野の先駆けとなった法医学・人類遺伝学者の原田勝二氏らの研究によって、アジアン・フラッシュと呼ばれるこの遺伝的変異が、特に東アジア人に集中している事実が明かされた。欧米人にはほとんど見られないこの変異は、古代の地理的環境や感染症への耐性獲得といった複雑な進化の歴史と深く関係していると考えられている。