連載開始当初から読者が固唾を呑んで見守り続けてきたのが、五条新菜とのもどかしくも尊い距離感の推移です。海夢が新菜に恋心を自覚したのは、第15話(アニメ第1期第5話)の電車内でした。コスプレ衣装作りに寝る間を惜しんで心血を注いでくれた新菜に対し、新菜が無意識に口にした「綺麗です」の一言で、海夢の心は一瞬にして撃ち抜かれます。以降、海夢の脳内は「すっ気…」「好きすぎてヤバい」という純情乙女のモノローグで埋め尽くされることになります。
しかし、本作は単なる甘いラブコメディでは終わりませんでした。物語最大の分岐点となったのが、原作第80話台から描かれた冬コミ(コミックマーケット)における「天命(ハニエル)編」です。新菜が自らの限界を削り、職人としての執念と狂気を注ぎ込んで仕立て上げた悪魔「ハニエル」の衣装を纏った海夢は、会場の群衆を陶酔させ、神がかったカリスマ性を放ちました。
だがその代償として、新菜は「海夢を遠い世界へ連れ去ってしまったのではないか」「自分のような人間が隣にいていいのか」という深い孤独と精神的断絶に囚われてしまいます。写真撮影の熱狂の裏で、二人の間にはかつてない冷たい沈黙と距離が生まれ、読者コミュニティでも「胸が苦しすぎる」「見ていられない」と大きな動揺が広がりました。
この重苦しいすれ違いを打ち破ったのが、原作第107話から第110話にかけて描かれた奇跡的な告白劇です。互いの胸中を押し殺しきれなくなった極限状態の中、新菜がついに長年抱え込んできた海夢への狂おしいほどの情愛を言葉にして吐露。それを受け止めた海夢の感情が決壊し、幾重にも重なる「好き」の応酬とともに、二人は長年の片思いを超えて恋人同士としての絆を結びました。SNS上では「着せ恋最高峰の神回」「何年も待った甲斐があった」と世界規模でトレンドを席巻する大反響を巻き起こしました。