野生動物から人間に感染する「人獣共通感染症」の中で、最も警戒されている病原体の一つがアライグマ回虫(Baylisascaris procyonis)である。国立感染症研究所の分析によると、この寄生虫の卵はアライグマの小腸内で成虫になり、フンとともに外界へ排出される。乾燥したフンから漂う卵を人間が誤って口にしたり吸い込んだりすると、幼虫が体内で孵化し、脳や眼球に移行して重篤な神経障害を引き起こすことがある。いわゆるアライグマ回虫症だ。子供が公園の砂場や庭先で遊ぶ際には細心の注意が求められる。
さらに、北米において致死率ほぼ100%とされる狂犬病の主要な媒介動物もまた、彼らである。日本国内での発生は長らく抑えられているものの、海外からの持ち込みリスクや特定外来生物の爆発的増加に伴う伝播リスクは看過できない。一噛みされただけで致命傷になり得る恐ろしさを、私たちは再認識しなければならない。