「竹之家」が誕生した舞台は、北京郊外の水関長城に隣接する広大な谷あいです。中国の著名な不動産開発企業・SOHO中国を率いる張欣と潘石屹夫妻が発案した「コミューン・バイ・ザ・グレート・ウォール(長城脚下的公社)」プロジェクトの一環として計画されました。
このプロジェクトは、アジア各国から選ばれた気鋭の建築家12人(坂茂、ゲイリー・チャン、承孝相など)が、それぞれ長城の自然環境に調和するプライベートヴィラを設計するという前代未聞の試みでした。その中で隈研吾が提示したのが、中国文化と密接に結びつきながらも近代建築では構造材として軽視されがちだった「竹」を主素材に据えるプランでした。
2002年の第8回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展に出品された同プロジェクトは、個人住宅部門で最高賞(パビリオン賞)を受賞。これによって「竹之家」の名は世界に轟き、隈研吾という建築家の名を欧米やアジアのトップシーンへと押し上げる決定的な契機となりました。2008年北京五輪のPR映像や、中国映画『狙った恋の落とし方。(原題:非誠勿擾)』の舞台としても起用されるなど、文化的なアイコンとして歴史にその名を刻んでいます。