1986年11月にリリースされたシングル『最後のHoly Night』。この楽曲の誕生には、当時のレコード会社バップのスタッフや制作陣による並々ならぬ執念があった。当時、JAL(日本航空)のCMソングとしてタイアップが決定するなか、楽曲提供の現場では妥協のないセッションが夜遅くまで繰り返されていたという。
作詞を担当した巨匠・売野雅勇は、杉山清貴が持つ独特の叙情性と洗練された都会的なボーカルスタイルを最大限に引き出すため、言葉の響き一つひとつを極限まで吟味した。制作秘話として語り継がれる未公開エピソードがある。当初提出された歌詞のバージョンでは、より切ない別れの色彩が強く打ち出されていた。しかし、CM映像との親和性とクリスマス特有の温もりを表現するため、スタジオ内で幾度も推敲が重ねられ、あの印象的な「最後のHoly Night」というフレーズへ辿りついたのだ。
ヴォーカルのダビング作業も過酷を極めた。過密スケジュールを縫って入った都内のスタジオで、杉山清貴は喉のコンディションを保ちながら、微細なピッチと情感のグラデーションにこだわり抜いた。ストリングスの重厚なアレンジとクリアなデジタルシンセの融合は、まさに当時の最新技術と職人技の結晶だったと言える。