タイトルの『移民の歌(Immigrant Song)』という名称から、平和的な移住者を連想する読者もいるかもしれません。しかし、歌詞の中で語られている「移民」の正体は、8世紀末から11世紀にかけてヨーロッパ各地を席巻した北方民族ヴァイキング(ノース人)です。
冒頭に登場する「氷と雪の大地」「白夜」「温泉」はスカンジナビア半島やアイスランドの風土そのものを指しています。彼らはロングシップと呼ばれる高速外洋船に乗り込み、英国本土をはじめとする「西の海岸(western shore)」を目指して略奪と征服の手を伸ばしました。
特筆すべきは、歌詞に散りばめられた北欧神話のモチーフです。「神々の鉄槌(The hammer of the gods)」とは、北欧神話最強の雷神トールが振るう聖なる槌「ミョルニル」の暗喩に他なりません。このフレーズは後に、レッド・ツェッペリン自身が放つ重厚なサウンドを表す代名詞ともなりました。
さらに「ヴァルハラ(Valhalla)」とは、最高神オーディンが統治する壮麗な宮殿を意味します。北欧神話の信仰において、戦場で勇敢に命を落とした戦士の魂だけがヴァルハラへと導かれ、世界の終末の日に備えて宴と鍛錬に明け暮れる栄誉を与えられます。「ヴァルハラ、今こそ俺は逝く!」という叫びは、死を微塵も恐れずに敵陣へと切り込むヴァイキングの狂気と誇りを象徴しているのです。