トルコアイスはなぜ伸びるのか?独特の強い粘りを生み出す決定的な理由は、原料である植物「サーレップ」の成分にありました。本場ドンドゥルマの製法や溶けにくい驚きの仕組みなど、知っておくべき真相を詳しく解説します。
現地トルコで「マラシュ・ドンドゥルマス(Maraş dondurması)」と呼ばれる本場の氷菓において、粘りを生み出す主役となるのがサーレップ(Salep)です。サーレップの正体は、トルコ南東部のアナトリア地方山岳地帯に自生するオルキス属などの野生ランの球根(塊根)を乾燥させて粉砕した植物性粉末です。古くからトルコアイスの原料はランの根として知られ、滋養強壮の温かい飲み物としても重宝されてきました。
このサーレップには、コンニャクの主成分としても知られる水溶性食物繊維「グルコマンナン」が豊富に含まれています。グルコマンナンの分子は非常に長い鎖状構造をしており、水分を含むと自重の数十倍から百倍もの水を抱え込んで網目状の強固なゲルネットワークを形成します。これがトルコアイスの伸びる仕組みの中核です。
さらに決定的なのが、アナトリア高原の厳しい気候で育った「山羊(ヤギ)の乳」の存在です。山羊乳は牛乳に比べて脂肪球が微細で、特有のタンパク質構造を持っています。鍋の中で煮立たせた山羊乳と砂糖、サーレップを合わせ、冷却しながら専用の長い金属棒(ディルダシ)で叩きつけるように練り上げます。この重労働によってグルコマンナンと乳タンパク質の分子同士が幾重にも複雑に絡み合い、包丁で切らなければ噛み切れないほどの強靭なコシが完成します。化学添加物に頼らない天然の分子結合こそが、トルコアイスの粘りの秘密なのです。