阿蘇の南麓に位置する高森町には、鎌倉時代から続く田楽文化が根付いている。かつて武士や農民たちが囲炉裏を囲み、手近な山菜や野菜に味噌を塗って炭火で焼いたのが始まりとされる。この素朴ながらも贅沢な調理法が、デジタル社会に疲れを感じる現代人の琴線に触れている。
パチパチと音を立てて燃える炭火。じっくりと時間をかけて火を通す過程そのものが、料理の一部として機能している。注文を受けてから職人が串を打ち、囲炉裏の灰に立てる手さばきは無駄がなく美しい。焼き上がるまでの30分間、囲炉裏から立ち上る芳醇な味噌の香りを楽しみながら連れと語らう時間は、現代の多忙な日常生活では味わえない最高の贅沢だ。