モンシロチョウの幼虫といえば「キャベツを食べるアオムシ」というイメージが定着していますが、なぜ彼らは他の植物ではなくキャベツを選ぶのでしょうか。植物生態学の研究によると、キャベツをはじめとするアブラナ科植物には、害虫を遠ざけるための辛味成分「グルコシノレート(カラシ油配糖体)」が含まれています。大半の昆虫にとってこの成分は有毒ですが、モンシロチョウの幼虫は体内に特殊なニトリル形成タンパク質を進化させ、この毒素を完全に無害化・解毒する能力を獲得しました。
むしろモンシロチョウの雌成虫は、前脚の感覚器でこのカラシ油成分を感知して産卵し、孵化した幼虫はこの匂いと味を摂食シグナルとして認識します。しかし、家庭菜園や理科観察で飼育を試みる際、この「食草への依存性」が引き金となって数多くの失敗を引き起こしています。飼育者が直面する致命的リスクは主に以下の3点です。
第1のリスクは市販野菜に含まれる微量農薬による中毒死です。スーパーで販売されているキャベツは人間には完全に安全な基準値ですが、体重わずか数ミリグラムの幼虫にとっては致死量となり得ます。水洗いしても組織に浸透した成分は除去できず、口にした幼虫が緑色の体液を吐いて突然死するケースが頻発します。
第2のリスクは餌の枯渇と鮮度低下です。キャベツの葉は乾燥すると硬化し、幼虫の顎では噛み切れなくなります。モンシロチョウの幼虫の餌はキャベツ以外にも、コマツナ、ブロッコリーの葉、ダイコンの葉、野草のナズナやイヌガラシなど、アブラナ科植物全般で代用可能です。鮮度を保つため、湿らせた脱脂綿で茎の切り口を包むなどの給餌工夫が欠かせません。
第3のリスクは飼育ケース内の高湿度による細菌感染(軟腐病・黒死病)です。幼虫は多量の水分を含む糞を排出するため、通気性が悪い密閉容器内では雑菌が繁殖し、体が黒く変色してドロドロに溶けるように死んでしまいます。キッチンペーパーを毎日交換し、常に風通しの良い環境を維持することが生残率を分ける鉄則です。