外見の類似性に反して、自然科学である集団遺伝学・分子人類学のデータは非常に興味深いコントラストを示しています。父親から息子へと受け継がれるY染色体ハプログループの分布を比較すると、両者の系統樹は数万年単位で大きく分岐しています。
キルギス人男性の約半数から6割以上を占める主要な遺伝子はハプログループR1aです。これはインド・ヨーロッパ語族やスラヴ系民族にも多く見られるユーラシア中央・西部に特徴的な系統です。一方で、日本人に固有かつ高頻度で見られるハプログループD1a2a(縄文系固有系統)やハプログループO1b2(東アジア・渡来系系統)は、現代のキルギス人集団からはほとんど検出されません。
遺伝的な全体距離(全ゲノム解析)において、日本人に最も近い集団は地理的にも隣接する朝鮮半島や中国東部の集団です。しかし、キルギス人の母系(ミトコンドリアDNA)には古代東ユーラシア系の要素が過半数残存しており、これに加えて氷河期のシベリア・中央アジア周辺で形成された北方モンゴロイド特有の寒冷地適応形質(平坦な顔立ち、皮下脂肪、蒙古襞)が両者に共通して色濃く受け継がれた結果、外見上の驚異的な一致が生み出されています。