名刺が放つ異様な存在感は、数々の映像作品でも象徴的な小道具として描かれてきた。北野武監督の名作『アウトレイジ』シリーズでは、名刺の差し出し方ひとつに張り詰める殺気と、組織の看板を盾にした冷徹な駆け引きが克明に描写されている。また、映画『ヤクザと家族 The Family』が浮き彫りにした時代の変遷に伴うヤクザの衰退と葛藤のなかでも、紙の名刺は過去の栄光と呪縛の象徴として強烈な印象を残した。
さらに、ハリウッドと日本のスタッフが共同制作しNetflixやU-NEXTといった配信プラットフォームでも世界的なヒットを記録した本格クライムサスペンスドラマ『TOKYO VICE』でも、アンダーグラウンドの力関係を示すアイテムとして緻密に演出されている。従来の任侠映画が美化しがちだった「男の契り」の道具立ては、現代のリアルな映像表現において、より生々しい権力闘争と心理戦の武器として再定義されているのだ。