ネット上のコミュニティやQ&Aサイトでは、「タブ譜さえ読めれば五線譜や音楽理論は一生勉強しなくていい」「タブ譜の数字通りに弾いているのにプロの音にならないのは機材のせい」といった極端な言説が散見されます。しかし、ここには楽器演奏における重大な盲点が存在します。
第1の誤解は、「タブ譜に書かれた運指が唯一絶対の正解である」という思い込みです。ギターは同じ音高の音が異なる弦・フレットに複数存在します(例えば「2弦5フレット」と「1弦開放」は全く同じE音)。採譜者(スコアの制作者)の手の大きさやプレイスタイルによってタブ譜のポジション指定は変化するため、手が小さくて届かないフレーズがある場合、異弦同音を使って別のポジションへ置き換える柔軟性が本来は求められます。
第2の盲点は、「音の強弱(ダイナミクス)とミュートの余韻」がタブ譜の数字だけでは伝わりにくい点です。タブ譜に「5」と書かれていた場合、その音をどれくらいのピッキングの強さで弾き、次の音を鳴らす瞬間に前の音を指で消音したかどうかで、演奏のクオリティは天と地ほど変わります。「数字を押さえて弾く作業」から「音のニュアンスをコントロールする演奏」へと意識を切り替えることが、脱初心者の境界線となります。
第3に、「タブ譜の丸暗記」だけに頼りすぎると、コードの構成音(ルート音やサード音)への理解が希薄になり、セッションやアドリブ演奏、耳コピへのステップアップで足踏みしやすくなります。タブ譜で運指を素早くインストールしつつ、「今弾いている音はコードの何の音なのか」を少しずつ意識することが理想的な学習姿勢です。