孫氏の人生における最大の分岐点の一つが、1990年の日本国籍帰化である。当時、帰化手続きを担当する法務省民事局では、日本国籍を取得する際には原則として前例のある「日本的な苗字」を選ぶことが慣例化されていた。担当官からは長年慣れ親しんだ「安本」姓での帰化を強く勧められたという。
しかし、孫氏は「先祖代々受け継いだ『孫』という姓を変えてしまっては、自分が自分である意味が失われる」と強く主張した。そこで彼が取ったウルトラCが、日本人である妻に一時期「孫」へと改姓してもらい、国内に「孫」という姓の日本人が存在する事実を作ることだった。実績を作った上で法務省民事局を納得させ、彼は見事に「孫正義」として日本国籍を手に入れたのだった。