かつて世界のエレクトロニクス産業を牽引し、革命的なイノベーションを起こしたソニー。その基盤を固めたのが、天才的技術者である井深大と、世界的起業家として名を馳せた盛田昭夫の二人だった。特に伝説的なウォークマン開発プロジェクトに象徴されるように、彼らの自由奔放で先駆的な企業文化は、世界中の若者を魅了した。しかし、会社が急成長を遂げる中で、盛田家が歩むべき道は複雑さを増していく。
多くの日本型同族経営とは異なり、ソニーグループ株式会社は早期から経営の透明性を重視し、直系の血縁者を自動的にトップへ据える構造を取らなかった。これこそがソニーをグローバル大企業へ飛躍させた原動力であったが、同時に「創業者の息子」という重い看板を背負った後継者たちにとっては、独自のビジネスで成功を証明しなければならないという過酷な試練を意味していた。