心臓が止まり、血流が途絶え、臨床的に「死亡」と診断された瞬間、人間の意識は完全に消滅するのか。この問いに対し、救急医学や脳神経科学の現場から従来の常識を揺るがすデータが次々と報告されています。
ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスをはじめとする国際研究チームが主導した大規模臨床研究「AWARE研究(AWAreness during REsuscitation)」およびその追跡調査では、心肺蘇生(CPR)を受けた患者の約20%から40%が、心停止中の知覚や思考の明瞭さを報告しました。さらに、脳波測定(EEG)を用いた精密な観察によって、心肺停止から数十秒から数分が経過した脳において、高次認知機能や記憶の想起に関わる「ガンマ波」の爆発的な同期活動(ガンマ波バースト)が記録されています。
かつて医学界では「心肺停止から数十秒で脳はフラットライン(平坦)になり、意識は消失する」と断定されていました。しかし現在では、脳が生命活動を停止する最後の瞬間に、極めて鮮明で統合された知覚体験を生み出す生理的プロセスが存在することが客観的証拠によって裏付けられつつあります。