『水の戯れ』を語る上で欠かせないのが、ラヴェルの恩師であるガブリエル・フォーレの存在である。当時、伝統と保守主義に凝り固まっていたパリ国立高等音楽院において、作曲科の教授であったフォーレは、若きラヴェルの類まれな才能と破天荒な和声感覚を誰よりも理解し、その自由な創作活動を全面的に擁護した。
実際、ラヴェルはこの作品を「我が愛する師、ガブリエル・フォーレに」という言葉とともに奉納している。音楽院内部での形式主義的な批判を跳ね返し、古典的な美徳と前衛的な響きを両立させることができたのは、師フォーレの深い慈愛と先見の明があったからこそだ。楽譜冒頭に掲げられたアンリ・ド・レニエの詩句「水を開花させる河神は笑う」は、保守的な音楽界に対する若き天才の爽快な宣戦布告でもあった。