なぜ希林さんは、暴れ馬のような裕也さんと離婚しなかったのか。その決定的な理由は、夫を単なる配偶者としてではなく、「己の慢心を戒める重石(おもし)」として捉えていた点にあります。
希林さんは生前、裕也さんについてこう語っていました。
「私にとって裕也さんは、自分を映し出す鏡。彼がいることで、私は傲慢にならずにいられる」
「裕也さんと一緒にならなかったら、私はもっと嫌な女になっていたはず」
どんなに周囲から称賛され、女優としての地位を確立しても、家庭内には決して思い通りにならない強烈な存在がいる。その不条理と向き合い続けることこそが、自らの魂を磨く修行になると考えていたのです。裕也さんの純粋さや狂気、弱さも含めて愛し、「すべてを面白がる」境地に達していたからこそ、40年を超える別居婚は破綻ではなく、2人にとって最も心地よい調和となっていました。