事件の主原因となったのは、同チェーンの名物メニューであった「和牛ユッケ」(当時1皿280円)でした。驚異的な安さで人気を集めていたこのメニューの裏には、命を軽視した杜撰な衛生管理とコスト削減の罠が潜んでいました。
調査の結果、店舗で提供されていた牛肉は、そもそも生食用として出荷されたものではなく、「加熱用」として流通していた牛肉でした。厚生労働省の当時の衛生基準では、生食用食肉は表面を削り取る「トリミング」と呼ばれる衛生処理が求められていましたが、同社は納入業者に対してトリミング済みの肉を発注していたと主張する一方、実際には十分な殺菌処理を行わないまま客へ提供していました。
さらに、納入された肉はまな板や包丁などの調理器具を介して菌が拡散する「二次汚染」を引き起こしやすい環境で調理されていました。東京都大田区の食肉卸業者「大和屋商店」から仕入れた肉には、極めて毒性の強い腸管出血性大腸菌O111およびO157が付着しており、これが加熱されないまま客の口に入ったことで、小児や高齢者を中心に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な症状を多発させる悲劇へと直結したのです。