西欧絵画を主軸とするエルミタージュに対し、ロシア固有の美の系譜を堪能できるのがサンクトペテルブルク・ロシア美術館(ミハイロフスキー宮殿)です。1895年に皇帝ニコライ2世によって設立されたこの美術館には、11世紀のロシア・イコン(聖像画)から19〜20世紀の近代絵画、アヴァンギャルドまで、40万点を超えるロシア美術品が収蔵されています。
なかでも圧巻なのが、移動派の巨匠イリヤ・レーピンの大作『ヴォルガの船引き』や『ザポロジエ・コサックの返書』です。過酷な労働に従事する人々の息遣いや社会の現実を鋭く描写したリアリズム絵画は、見る者の心を揺さぶります。また、イヴァン・アイヴァゾフスキーが描いた劇的な海洋画『第九の怒濤』の壮大なスケールも必見です。
さらに、工芸美術に関心があるならファベルジェ美術館も見逃せません。シューヴァロフ宮殿を改装した館内には、天才宝飾師ピーター・カール・ファベルジェがロシア皇室のために制作した「インペリアル・イースターエッグ」が展示されています。精緻な細工と貴金属、宝石が織りなす驚異的なからくり細工は、ロマノフ王朝最末期の華麗なる宮廷文化の精華を今に伝えています。