薄暗い個室にイントロが鳴り響いた瞬間、部屋の空気が一変する。『恋唄』という楽曲が持つドラマ性は、他のポップスや歌謡曲とは一線を画す。静けさの中から立ち上がる前川清のボーカルスタイルは、過剰な装飾を削ぎ落としたからこそ届く、むき出しの哀愁そのものだ。
昨今の音楽シーンでは、テクニカルなハイトーンや複雑なリズムを競う楽曲が目立つ。その反動だろうか。言葉のひとつひとつに重みを持たせ、行間を聴かせる『恋唄』の骨太な叙情性に、聴き手も歌い手も強烈なカタルシスを覚えている。ワンコーラス聴くだけで胸を締め付けられる世界観は、時を経ても色あせるどころか、むしろ輝きを増している。