興味深いのは、この熱狂がインフルエンサーのステマや派手なバズ動画から生まれたものではない点だ。香りは画面越しに伝わらない。いくら4K映像で美しく演出しても、匂いそのものをダウンロードすることは不可能なのだ。
「友人の部屋に泊まりに行ったとき、玄関を開けた瞬間の匂いで頭痛が引いた」「言葉では説明できないけれど、あの人の車の中だけは別世界だった」。そんな生身の会話や、個人のパーソナルな長文テキストによるクチコミが火種となった。デジタル化が進めば進むほど、人間はオフラインの直接体験に対して狂おしいほどの信頼を寄せる。見えないからこそ、信じられる。この皮肉な逆説が、ブームの底流を分厚く支えている。