本作の生みの親であるアンディ・ウィアー(Andy Weir)は、緻密な理系ロジックとユーモアを融合させる天性のストーリーテラーだ。世界的な大ヒットを記録した小説・映画『オデッセイ』(原題: The Martian)で火星に取り残された男の生き残り劇を描いた彼が、本作ではスケールを宇宙規模へと一気に押し広げた。
物理学、化学、天文学、そして生物学。実在する科学理論を骨組みとし、架空の脅威「アストロファージ」という極限の設定を破綻なく組み上げる手腕は圧巻だ。徹底してリアリティを追求したハードSF(Hard Science Fiction)でありながら、専門知識がない読者をもぐいぐい引き込む圧倒的なテンポ感。難解な科学的課題がユーモラスなアイデアで解決される爽快感は、まさにウィアー節の真骨頂と言える。