多くの日本人学習者を長年悩ませてきた最大の難所が、「ask B of A」との使い分けだろう。結論から言えば、この2つは似て非なる別物だ。日常的なやり取りで混同すると、相手に異様な重圧感や時代がかった印象を与えかねない。
世界的言語学者David Crystal氏の論考やOxford University Pressの最新コーパスデータを分析すると、その差は一目瞭然となる。「ask a for b」が日常的かつ直接的なアクションであるのに対し、「ask B of A」は格式張った響きを持ち、相手に対する心理的負荷(burden)が桁違いに大きい文脈で選ばれる。
代表格が「May I ask a favor of you?(折り入ってお願いがあるのですが)」という決まり文句だ。ここでは「of」の持つ「〜の中から抽出する、〜の身を削って差し出してもらう」という重たいニュアンスが作用している。もしカフェで友人に「砂糖を取って」と頼む際に「ask B of A」の構図を持ち出せば、大仰すぎて冗談にしか聞こえない。相手との距離感、そして要求する中身の重さに応じて、前置詞の選択を瞬時に嗅ぎ分ける感性が求められる。