前評判では現王者の圧倒的有利と見られていた。直前までの5連勝、しかも全試合フィニッシュという完璧な戦績がその根拠だった。しかし、格闘技の神様は時に最も残酷なシナリオを用意する。
ゴング直後、中央を取ったのは王者だった。いつものように鋭いジャブで圧力をかけ、相手をロープ際に追い詰めていく。誰もが「いつもの展開」を予感した。だが30秒過ぎ、チャレンジャーが放ったワンツーのリアクションとして放たれたカウンターの左フックが、王者のあごをピンポイントで打ち抜いた。
膝から崩れ落ちる王者。追撃のパウンドを浴びせる前に、レフェリーが身を挺して間に割って入った。決着タイム、1分38秒。静寂の後、さいたまスーパーアリーナの屋根を揺らすほどの歓声が上がった。