地鶏屋の評判を調べる中で、避けて通れないのが「鳥刺し(生食)」に関する安全性の議論です。ネット上では「新鮮な地鶏なら鳥刺しを食べても絶対に安全」「朝引き地鶏だから菌はいない」という言説が今なお散見されますが、これは医学的・科学的に明確な誤りです。
鶏肉の生食による食中毒の主たる原因はカンピロバクターという細菌です。この菌は鶏の腸管内に常在しており、どれほど清潔な環境で育てられた最高級の地鶏であっても、解体処理の過程で肉の表面に微量に付着するリスクをゼロにすることは物理的に不可能です。「新鮮=無菌」ではなく、どれだけ新鮮であっても菌が付着していれば感染を引き起こします。
現在、厚生労働省は鶏肉の生食について中心部まで75度で1分間以上の加熱を行うよう強く求めています。ただし、伝統的に鳥刺し文化が根付く鹿児島県と宮崎県では、独自の厳しい「生食用食鳥肉の衛生基準」が条例で制定されています。この基準に適合した認定加工施設で厳密な解体処理と表面殺菌(加熱処理等)を行った肉のみが、正規の生食用として流通を許可されています。
信頼できる地鶏専門店では、産地条例の基準を満たした正規ルートの肉のみを使用し、保存温度や器具の使い分けを徹底しています。逆に、一般流通の加熱用鶏肉を単に「新鮮だから」という理由だけで生や半生で提供している店舗は極めてリスクが高いため、消費者はその店が掲げる安全管理の基準を冷静に見極める必要があります。