映画祭や授賞式のレッドカーペットは、誰でも自由に歩ける場所ではありません。そこには招待客の厳格な選別と、格式を守るための明確なルールが存在します。
歩行が許可されるのは、ノミネートされた映画監督やキャスト、授賞式のプレゼンター、主催者から直接招待を受けたVIP、そして巨額のスポンサー契約を結んだグローバルアンバサダーなどに限られます。映画関係者であっても、席のランクやパスの種類によって通行ルートが厳密に分断されているのが現場の実態です。
特に世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭では、マナールールが非常に厳しく運用されています。伝統的なブラックタイ(タキシードやイブニングドレス)の着用が義務付けられており、かつては女性のフラットシューズ着用をめぐって大きな論争が巻き起こりました。さらに進行の遅延や品位の維持を理由に、カーペット上での自撮り(セルフィー)は完全禁止とされています。
一方、アカデミー賞のレッドカーペットはファッション業界にとって年間最大のプロモーション舞台です。トップメゾンが半年以上前からスターのためにカスタムメイドのドレスを仕立て、数億円相当のハイジュエリーを貸し出します。歩くスピードやカメラマンの前でのポージング時間、立ち止まる位置に至るまで、熟練のパブリシスト(広報担当)によって秒単位でコントロールされています。