久保本家酒造の酒を飲む際、絶対に外せないのが「燗」という体験だ。特に「睡龍」や「生酛のどぶ」は、50度から60度近くまで温度を上げた「飛び切り燗」でその真価を遺憾なく発揮する。
一般的に、質の低い酒を温めるとアルコール臭が鼻につき、バランスが崩れてしまう。しかし、しっかりとした生酛の酸と熟成を経た本品は、加熱することによって眠っていた旨味が爆発的に開花する。一口含めば、温かい液体が身体の隅々にまでじんわりと沁みわたり、後味は驚くほどキレよく消えていく。濃密な肉料理や脂ののったうなぎ、出汁の効いた煮物と合わせると、お互いの旨味が引き立ち、杯が止まらなくなる。これこそが、同蔵の追い求める究極の燗酒の真実である。