視点を日本国内に移すと、富士山(3776メートル)の圧倒的な知名度の陰に隠れたもう一つの巨峰が存在する。南アルプス北部に位置する北岳(3193メートル)だ。
富士山が5合目まで車やバスで容易にアクセスでき、夏の登山シーズンには初心者でも登頂可能な整備された道を備えているのに対し、北岳の登山口へのアプローチは険しい。登山口である広河原から急登をひたすら歩みを進めなければならず、山頂に至るには高度な体力と歩行技術が求められる。
さらに、北岳の東側に聳え立つ「北岳バットレス」は、高さ約600メートルの日本屈指の大岩壁であり、日本のロッククライミング史を彩ってきた聖地だ。安易な観光客を拒み、自らの足と手で岩を掴む者だけを受け入れる孤高の気品。これこそが、登山家たちを惹きつけてやまない北岳の知られざる真実である。