対立の深層を探るには、二人の生きてきたバックボーンの対比を欠かすことができない。浅香光代は幼少期から舞台に立ち、浅香光代劇団を率いて女形・剣劇の第一人者として芸の道を極めてきた生粋の叩き上げだ。伝統と礼儀作法、芸道の厳しさを何よりも重んじる職人肌の気質を持っていた。
対する野村沙知代は、その奔放かつ物怖じしない言動で独特の存在感を放つ強烈なキャラクターだった。芸道に対する誇りと美学を胸に抱く伝統芸能の重鎮と、そうした芸能界の暗黙のルールを悪びれもなく飛び越えていく新参者。生き様も価値観も根本から異なる二人がぶつかり合うのは、ある意味で必然だったと言える。